第36回全日本準優勝 
野本尚裕 闘い終えて。


―今年の全日本を振り返ってみて野本選手自身はどう思われていますか。
野本 大会自体は大成功だったと思います。ワールドカップ代表を選ぶ決定戦ということで、テクニック戦以上に気迫の戦いというか、是か非でも代表になりたいという気持ちの戦いがすごく感じられる大会でした。きっと見に来られた方も面白かったんじゃないでしょうか。ただ個人的には悔しい限りです。

―それはやはり決勝まで行きながら代表に手が届かなかったからでしょうか。

野本 もちろんそれはあります。どうしても代表になりたいという気持ちはありましたが、それ以上に悔しかったのは塚越選手に何もできずに負けてしまったことです。同じ相手に何度も負けてはいけないのに、塚越選手とはもう3度も対戦しているのに悔しい限りです。

―本戦でバンバン勝ち上がってきた塚越選手と延長や再延長が多かった野本選手のダメージの差がでてしまったんでしょうか。

野本 それを考えなくても単純に今年の塚越選手は強かったし勢いもあったと言うことだと思います。

―大会前、塚本選手との再戦が話題になり、自身も強く意識していたと思いますが。

野本 そうですね。本当に塚本選手とはもう一回試合をしてみたかったです。そのための練習をしたり、対策を考えたりもしていましたが、トーナメントはなにがあるかわからない試合ですからしょうがないですね。上がってきた山田選手も非常に強い選手でした。

―対戦してみた山田選手の印象はどうですか。

野本 うわさ通りパンチが強い選手でしたが、それ以上に気持ちが強い選手でした。
―特にその気持ちの強さを感じた場面は。
野本 こちらの攻撃が当って手ごたえを感じたことが何度もあったのですが、その手ごたえを感じた攻撃の後必ず、それまで以上の力で突きを打ち返してきました。その時彼の気の強さを強く感じました。 
―山田戦以外で印象に残っている試合は。
野本 やはり佐藤さんとの試合です。
―前の対戦では佐藤さんの上段で倒されてしまいましたが、今回は雪辱を果たして勝利しましたが野本選手自身は何が変わったと思いますか。
野本 以前は佐藤選手の上段が全く見えていませんでした。見えていないどころか佐藤選手が上段を出してくるとまったく思っていないところで蹴られてしまいました。あとこちらの気持ちの問題ですが、以前の試合では乗ってくると自分の攻撃しか考えなかったということがありました。いい技が入ると「いける!」と思って勝とう倒そうという意識が出てきますが、自分の場合、そう思うと自分の攻撃のことしか見えなくなってしまって相手が何をしてくるかがまったく見えていませんでした。そこへ予想外の上段をもらったことが以前の敗因でした。

―今回も上段が当る場面がありましたが、意識できていたので耐えられたということですか。
野本 そうですね。本当は当ってる時点でだめなんですけどね(笑)今は佐藤選手に限らず、どんな場面でも防御したり、当っても意識することで耐えることを心がけています。

―野本選手は惜しくもワールドカップ出場を逃してしまいましたが、来年の全日本へ向けて、どう自分を作り直していきたいと考えていますか。
野本 今回は腕の調子も良くなったので突き技の稽古がたくさんでき、試合中でもこれまで以上に強い突きを使うことができました。その一方で足の方に故障が出てしまい、あまり蹴りの稽古ができなかったということが残念でした。自分の場合、ローキックの威力を出すためにサンドバッグへの打ち込みを重視しているのですがそれがほとんどできていませんでした。だから、今回対戦した方は今までほどの威力を感じなかったと思います。来年はウエイト制もないので溜まったケガや故障をしっかり直し、1年かけて体を作り直して全日本に臨みたいと考えています。あと自分はワールドカップに出ることはできませんでしたが、竹澤さんが四国の代表として出場されるのでそのお手伝いをさせていただきたいと考えています。

―練習相手をかってでるということですか。

野本 今回もそうだったんですが、大会が近づくと竹澤さんがいつもクルマで高知から自分が住んでいる愛媛まで来てくれていました。自分がここまでの結果を出せたのは竹澤さんのおかげなので、少しでも恩返しと言いますか、竹澤さんの稽古のお手伝いができればと考えています。

―全日本ではもう後一歩のところまで来ましたから、来年期待していますよ。
野本 まだまだ課題や越えないといけないことも多いので、1年後にいい試合ができるようにまたがんばります。