中谷 元 衆議院議員インタビュー

「新極真の精神で活動しているから、当選もできるし、大臣にもなれる。」


中谷元衆議院議院
高知県出身の中谷元議員は、91年に三好一男・高知支部長と出会って以来、15年以上も新極真会を応援しつづけている。
毎年正月には寒稽古に参加し、昨年には「名誉参段」の黒帯を取得。防衛庁長官も務めた中谷議員は、空手のどこに魅力を感じたのだろうか。

Profile
中谷 元(なかたにげん)
1957年10月14日生まれ、高知県出身。
自由民主党所属。当選回数6回。元国務大臣・防衛庁長官。
座右の銘は「信念」、「凛」。

07元旦早朝稽古
今年の元旦、三好支部長と恒例の早朝寒稽古に励んだ中谷議員

-----中谷先生は三好一男師範と長い親交があるそうですが、出会いはいつ頃なのですか?

中谷 平成3年ですね。私は前年に衆議院議員に初当選したばかりで、三好師範は高知にやってきてゼロから空手を普及させようとしていました。お互いに昭和32年生まれの同い年ということもあり、すぐに意気投合して親友になりました。それから、もう15年以上の付き合いになります。

-----毎年、正月には寒稽古を行なっていると聞きました。

中谷 高知の桂浜でね。とてもいい精神修行になります。正月は酒を飲んだり、ゴロ寝したり、どうしてもダラダラしてしまいがちですけど、元旦は必ず朝4時に起きて、5時頃から御来光まで稽古をする。そして日の出と同時に海に入る。最初は寒いですけど、自分が鍛えられている実感があります。

-----空手の魅力とは何でしょうか。

中谷 やはり武道性でしょうね。武士道的な精神、日本古来の礼儀礼節、義理、人情、浪花節的な心配り……。 そういった古き良き考え方が、空手の稽古をすることで入り込んでくるというか、身についてくる気がします。私はもともとラグビーをやっていましたが、ラグビーは15人のチーム同士がボールを回してトライする。空手は1対1で、素手・素足によって相手を倒すというストレートな闘い。これも自分にとってはまったく新しい世界で、新鮮でした。

-----今では高知だけでなく、四国全体に新極真空手がどんどん広がっていますよね。

中谷 たいした人物ですよ、三好師範というのは。私は政治家ですから、いろいろな人に会いますが、本当に惚れる人は必ず何かを持っています。彼の場合は、純粋さ、素直さ、清々しさ。なぜそういう人間になったのかと考えると、やはり日々修練をして、自分を磨き続けているからでしょう。そしてそのバッグボーンは、故・大山倍達先生の『空手バカ一代』の精神だと思うんですね。原点がすばらしいから、そこに育った人間もすばらしいんだと思います。

-----先生も現在は、大会顧問として新極真会全体の応援もされていらっしゃいますね。

中谷 国会議員の有志が集まって、ずいぶん前から、応援団を結成しております。会長は野田聖子議員。私が副会長。他にも浜田幸一さんの息子さんの浜田靖一議員、小此木八郎銀などがメンバーですが、なんとなんと、新極真の応援をすると若くして大臣に抜擢されるというジンクスが生まれたんです。

-----たしかに、野田先生は郵政大臣、中谷先生は国務大臣(防衛庁長官)になられましたね。

中谷 野田さんは38歳ぐらい、私はその2年後、43歳の時でした。しかも、普通では考えられないような大抜擢です。どうして選ばれたのか理由はわかりませんが、私はこう考えています。新極真の精神で政治活動をしているから、当選もできるし、大臣にもなれるんだと。やはり大臣を務めるとなれば、人間の考え方、実行能力などが問われます。その点、新極真に共鳴しているということは、類は友を呼ぶというように、武道としてのすばらしい心、理念、発想、行ないに同調していると言えます。だから、社会的にも評価していただけるのだと信じています。今後も新極真の精神を忘れてはいけないと思っていますし、何か不都合があったからと言って応援団をやめるようなこともありません。

中谷元衆議院議員

-----空手の精神は、政治にも生きるということですね。

中谷 政治の世界にいると、いろいろな誘惑があります。地位とか、お金とか。しかし、政治の目的は正しくいい世の中をつくることであって、そのために正しいことは正しいと言える勇気、これをやるんだという信念、そういった強い精神力がないと一人前じゃない。誘惑に負けず、自分自身を貫く強さを持つという点で、空手の精神はおおいに役立つと思います。

-----防衛庁長官を経験されたことで、「世界の中の日本」というものを痛切に体感されたと思います。現代は日本人のアイデンティティが失われているとも言われますが、そうした中で武道の重要性を感じることはありますか。

中谷 ありますね。サッカーや野球と違い、空手は個々の強さが求められる。最後は自分しか頼れないという中で鍛錬していく厳しさは、世界に通用する武道の魅力だと思います。だから、自信を持っていい。和紙、焼き物、木造建築など、日本のオリジナルというのは長い歴史と伝統の裏づけがあり、すべて世界に通用する文化だと思います。この空手も、日本発の伝統文化なんだと世界に発信していくべきだと思いますね。

-----明治維新で日本を動かした志士たちも、みんな剣術などを学んでいましたよね。そういう歴史を見ても、武道は日本人が世界と渡り合っていくために重要な役割を担うと私も思います。現在のようなグローバル社会だからこそ、日本ならではの文化に誇りを持つことが大切なのではないかと。

中谷 その通りですね。また、強い体と正しい心を養う上でも、武道は効果的です。坂本龍馬も幼少時は寝小便タレの弱い子供だった。それが剣道の道場に入って、最終的には誰にも負けない自信ができた。同志の中岡慎太郎も同じで、結果的に2人とも日本にとっては重要な人物になった。第1段階は強い体と心をつくること。第2段階は社会のために良い行ないをすること。それが武道だと私は思います。新極真会も、いろいろな分野で社会に貢献する人を輩出している。単なるスポーツで終わらない、日本のための組織になっています。これから稽古を積む人もそういう意識でいれば、自分自身の人生にプラスになると思いますね。

-----最後に今年は4年に1度の世界大会が開催されますが、過去すべての大会で王座を守ってきた日本の危機が叫ばれています。

中谷 そうですね。しかし、何の資源もない島国の日本が世界有数の豊かさをつくったように、体格やパワーでは負けても、精神力、稽古量、考え方などを武器に「これが日本の空手道だ」というものを見せていただきたい。もちろん、私も応援にまいります。

 


空手LIFE 2007年8月号より