第34回全四国空手道選手権大会
2017年4月16日◎くろしおアリーナ
カラテライフ2017年5-6・7-8月号 Text/伊藤翼 Photos/神田勲

昨年の第33回大会で後輩の三上和久に不覚を取った酒井瑞樹。その後の三上は全四国大会をステップに世界へ飛び出した。全世界ウェイト制大会日本代表の誇りを胸に三上は全四国初制覇を目指す。そして、酒井のリベンジなるか。

 

[一般男子上級の部]

酒井瑞樹(高知支部)

 
[一般男子上級の部]

三上和久(愛媛支部)



昨年の準決勝。酒井は一気にパワーで攻め立てる。
 
三上は距離を取って酒井を翻弄する。

体重判定に涙を飲んだ酒井。
 
型(団体)の部では山中三兄妹の連覇なるか。
大会主催者

三好一男(高知支部・愛媛支部 支部長)

今回の見どころは全世界ウェイト制大会の日本代表となった三上和久選手に、先輩である酒井瑞樹選手がリベンジをはたせるかというところです。酒井選手は今大会に向けて減量に挑んでいます。まだまだ先輩としてがんばってもらいたいところです。三上、酒井両名の他にも高校生を中心に伸び盛りの若手に注目です。その他、昨年の型団体上級の部で優勝した山中三兄妹が、型個人の部、組手と全制覇できるかにも注目です


国内のブロック大会としては最長の歴史を誇る全四国大会。一般男子上級の部で今大会の本命と思われるのは第6回全世界ウェイト制大会日本代表の三上和久だ。三上は昨年の同大会で決勝に進出。兵庫中央支部の長野義徳に惜敗した。だがその勢いに乗り、第3回JFKO全日本大会、第48回全日本大会で三回戦へ進出。安定した実績を評価され、高校生ながら第6回全世界ウェイト制大会の日本代表に大抜擢された。3月10〜12日に行なわれた日本代表合宿では強烈な突きで先輩たちにも臆せず挑む姿が見られた。また、黒帯も取得し、満を持して全四国大会王座に挑む。

三上に待ったをかけるのは一昨年の優勝者・高知支部の酒井瑞樹。酒井は昨年の同大会準決勝で三上に惜敗。三好道場の後輩である三上に体重判定で負けてしまい、今回は大会に向けて減量を決行。リベンジをはたすべく厳しい稽古に臨んでいる。はたして酒井が先輩の意地を見せることができるだろうか。

また、三上につづく伸び盛りの高校生も多数出場しているため、王座の行方は予断を許さない。

この他に注目したいのは型の部。昨年の型の部団体上級の部で優勝した高知支部の山中湧太・賢太・咲和の三兄妹が組手と型個人の部、型団体上級の部と全階級制覇を目指す。こちらも楽しみだ。




三上和久が“宿題”をクリア!初の四国−で胸を張って世界へ 好調の酒井瑞樹は昨年の雪辱ならず

決勝戦序盤、三上の上段前蹴りが酒井の顔面をとらえる。

3度目の挑戦で全四国チャンピオンに輝いた三上。背後の横断幕の文字通り、ここから世界へ羽ばたく。
 
酒井は左の下段廻し蹴りや内股蹴りで三上に応戦していく。

突きと下段蹴りを軸に、上段廻し蹴りも見せた三上。終盤は突きのワンツーからヒザを連発し、本戦で酒井を振り切った。
 
「普段から胸を貸してもらっている先輩なので、恩を返す意味でも本戦から全力でいきました」と三上。特別な相手を下しての初戴冠となった

昨年9月の第31回全関西大会で一般部初優勝を飾り、10月の全日本大会では藤原将二郎を破って価値ある三回戦進出。大会後には第6回全世界ウェイト剽軽重量級の日本代表に初選抜されるなど、飛躍の2016年を過ごした三上和久。

そんな17歳には世界へ臨むにあたり、ひとつだけやり残したことがあった。それは、過去に2度挑戦しながら頂点に立てていない、地元・四国のチャンピオンになること。

はたして、三上は壮行試合を優勝で飾れるのか。今年の全四国大会一般男子上級の部のテーマは、その一点に絞られていたと言っていい。
「今朝は午前2時に目が覚めてしまい、その後も眠れませんでした。そんな経験は今までなかったですね」。かつてない注目度の中、負けられない立場で臨むことが重圧となっていたのだろう。試合前の三上は苦笑いを浮かべながら、そう明かした。
「動きが硬かった」と反省を口にしながらも、初戦を本戦3−0で突破すると、続く準決勝では高橋辰弥に本戦5-0で完勝。決勝戦で対峙したのは、三好道場の先輩・酒井瑞樹たった。三上にとって酒井は、一般部デビュー戦となった2年前の全四国大会で敗れて以来、追いつくことを目標に稽古に励んだ特別な相手。


一般男子上級の部入賞者(左から準優勝の酒井、優勝の三上、3位の谷龍治と高橋辰弥)と、前参議院議員の広田一大会副会長、緑健児代表、三好一男副代表、藤原康晴支部長。
今大会の人賞者と、支部長・道場長、関係者による記念撮影。

中学2年男子上級の部は、中島健心が藤原史苑から上段廻し蹴りで技有りを奪い、優勝を飾った。
 
中学2年女子上級の部は、延長で田中利奈を下した高嶋紗莉が頂点に立った。

中学3年女子上級の部は、如水会館の徳井琴子が胴廻し回転蹴りで技有りを奪い、町田実央を退けた。
 
高校1年男子上級の部は、堀江俊明が35kgの体格差を跳ねのけ、鈴木皓大を下した。

高校2〜3年男子上級の部は、森下蒼太が粟飯原剛輝から後ろ蹴りで一本勝ちを収めた。
 
壮年(35才以上40才未満)上級の部は、井村真也を退けた久米大介が制覇。

壮年(40才以上45才未満)上級の部は、(社)極真会館愛媛県戸田道場の山下学が岡島弘之に勝利。
 
壮年(45才以上)上級の部は、大久保匡が細川広明を下して優勝を飾った。

午前中には型部門も行なわれた。中学・高校男子上級の部は。中内功大が制した。
 
中学・高校女子上級の部は、五十四歩を披露した田中利奈が優勝を飾った。
 
一般男女上級の部は、山中湧太が貫録の制覇。
型・団体上級の部は。山中湧太、山中堅太、山中咲和の高知Aが頂点に立った。

昨年までの10年間で優勝2回、準優勝1回、3位3回と、長らくこの大会の中心に君臨する酒井だが、昨年は三上に体重判定で敗北。9月の全関西大会決勝戦でも不覚を取り、1勝2敗と負けが先行している。
「勝ったことがある相手に負けるというのは、相手より自分のほうが稽古をしていなかったということです。それが本当に悔しい」と語る酒井は、三好一男師範からのアドバイスもあり、前回大会後から減量を敢行。103にkgあった体重を10kg以上絞り、92kgで今大会へ臨んだ。 その効果は明確に表われる。軽やかなステップワークに加え、本来の持ち味であるシャープな足技がよみがえり、準決勝までの3試合をすべて本戦5−0で完勝。三上へのリベンジと3度目の王座戴冠をかけ、ファイナルの舞台に立った。
「日本代表のプライド」と「先輩の意地」がぶつかり合った決勝戦は、ラスト30秒から試合が動いた。三上が一気にギアを上げ、突きのワンツーからヒザのコンビネーションを連発。酒井の反撃はいずれも単発に終わり、三上が初優勝を決めた。
「世界へ臨むにあたってどうしても全四国は獲っておきたかったので、ここで負けられないという気持ちがありました。全世界ウェイト制では海外勢に勝って、日本人選手と当たるところまでいって、入賞、優勝とつなげていきたいと思います」 三度目の正直をはたし、またひとつ階段を上った三上。思い残すことなく、胸を張って決戦の地へ向かう。




ベスト4を三好道場勢が独占若い力が未来への希望を示す 女子は石原凛々がブロック大会連続V

三上和久が初優勝を飾った一般男子上級の部は、くしくも準々決勝の4試合すべてが三好道場VS他支部という構図となった。昨年は兵庫中央支部の長野義徳に優勝をさらわれているだけに、王座奪還は地元勢の総意と言えただろう。

酒井瑞樹は江口雄智の弟・智翔と対戦。下段蹴りを軸に、上段廻し蹴りや後ろ廻し蹴り、ヒザ蹴りと多彩な足技を見せ、本戦5−0で勝利。 愛媛支部の師範代である谷龍治は、瀧本一斗との初戦を下段廻し蹴りの一本勝ちで飾り、井上達二とのベテラン対決に臨んだ。突きとヒザで優位に立ち、本戦で快勝を収めた。

17歳同士の対決となった高橋辰弥と赤木敬祐の一戦は、高橋が回り込んでの突きと下段蹴りで攻め立て、本戦5−0でベスト4入りを決めた。

三上は初戦となった準々決勝で、東京から参戦した志村朱々璃を迎え撃った。下突きとヒザでジリジリと圧力をかけ、本戦3−0で白熱の好勝負を締めくくった。

この結果により、三好道場勢がベスト4を独占することに成功。続く準決勝はそれぞれ、高知支部と愛媛支部の争いとなった。

酒井は谷に対し、試合開始直後に左上段廻し蹴りをヒットさせる。技有りこそ奪えなかったが、その後もペースを握り、本戦勝利。三上は正拳突き、カギ突き、下突きを巧みに打ち分け、高橋に貫録勝ちを収めた。



一般男子上級の部準決勝は、開始直後に上段廻し蹴りをヒットさせた酒井のペースで進み、谷から本戦5-0で完勝を収めた。
 
もうひとつの準決勝は、三上が強烈な突きやヒザで高橋を攻め立て、盤石の内容で決勝行きを決めた。

準々決勝では、多彩な蹴り技を見せた酒井が江口智翔に本戦5-0で勝利を収めた。
 
谷と井上達二の両ベテランが激突した準々決勝は、突きからのヒザで谷が優位に立ち、本戦で勝負を決めた。

現役高校生対決となった高橋と赤木敬祐の準々決勝は、本戦5-0で高橋に軍配。
 
準々決勝屈指の好カードとなった三上と志村朱々璃の一戦は、下突きとヒザで圧力をかけた三上が本戦3-0で志村を退けた。

また、一般女子フルコンタクトの部では、この大会から2週間前に行なわれた全関東大会中量級を制している石原凛々が参戦。ブロック大会連続制覇なるかに注目が集まった。

初戦となった準決勝では、社団法人極真会館愛媛県戸出道場の国本明住に苦戦を強いられたものの、延長3−0でこれを突破。決勝戦では砂川久美子と拳を交えることとなった。

女子のレジェンドに対しても物怖じせずに攻撃を仕掛ける石原に対し、砂川は問合いを取り、的確にカウンターを合わせていく。中盤までは差のない攻防が続いたが、ラスト30秒から石原が下突きとヒザのラッシュで一気呵成に砂川を押し込み、本戦5−0で快勝。現在の勢いがそのまま結果に結びつく形となった。
「初戦は動きが硬かったですけど、決勝のラストは動けたのでそこはよかったです。前足をしっかり使って接近戦になっても相手に合わせることなく、自分のペースで闘えるようにしなければいけないと思います」 試合後に収穫と今後の課題を語った石原は、約1ヵ月後に行なわれた第4回JFKO全日本大会軽重量級で初の3位入賞をはたした。全関東大会と全四国大会で得た経験が、活躍につながったのかもしれない。

男女の一般部を制した三上と石原は、いずれも現役高校生。若い力の台頭で、未来への明るい希望が見えた大会となった。



5名がエントリーした一般女子フルコンタクトの部は、新鋭の石原とベテランの砂川が決勝に駒を進めた。石原は得意の後ろ蹴りを放っていく。
 
手数の石原に対し、砂川は一発の有効打に活路を求めたが、終盤は下突きとヒザで前へ出る石原に押される場面が見られた。

全関東大会に続き、ブロック大会2連続優勝を飾った石原。
 
会場入口には献血車が設置された。
この日、来場していた第6回全世界ウェイト制日本代表選手団に、花束が贈呈された。奥村幸一監督と、選手を代表して山田一仁が大会への抱負を述べた。

少年部演武では、三好道場の道場生が気合いの入った演武を披露した。
 
大会会長の中谷元衆議院議員も、多忙な公務の合間を縫って会場へ駆けつけた。

盛大に開催された打ち上げパーティーの中で、緑健児代表と藤原康晴支部長の誕生日が祝われた。
 
会場にいた全員で円陣を組み、「新極真会の歌」と『同期の桜』を熱唱した。