まるで冷蔵庫の中にいるような極寒の稽古場は、選手の体から放たれる熱気で室温が上がっていった。
「大会まで、あと113日!」
奥村幸一監督の大きな声が響き渡る。集結した日本代表選手33名は、第6回全世界ウェイト制での死闘を覚悟しているのか、基本、移動、補強、組手を全力で取り組んだ。緑健児代表、小林功副代表、三好一男総監督、奥村監督、世界トップクラスのコーチ陣・オブザーバーが先頭に立って選手を鼓舞する。最初で最後の日本代表強化合宿は、最初からトップギアに入ったまま突っ走った。
「もっと声を出して行こう!」
第11回世界チャンピオンの島本雄二が、男子主将としてみんなを引っ張る。ケガで稽古を見守る形となった副主将の入来建武も、「声を出そう」とこれに呼応する。とくに目立つ動きをしているのは、前田優輝だ。いつも全力で稽古と向き合う前田が、動きでリーダーシップを取っているように見える。合宿を行なうと毎回の光景ではあるが、若い選手に刺激を与えるといいう意味でも彼の存在が、日本のレベルをさらに引き上げているように感じる。
初日の稽古は想像以上に厳しい内容だったが、二日目は3回も行なわれ、選手の気合いの声が増えていく。誰も根を上げようとはしなかった。
苦しい時に日本代表を支えたのは、強化指定選手が参加していたからだろう。53名の強化指定選手は、日本代表へ選考されずに悔しい思いをした選手も多くいる。なかでも第11回世界大会5位の島本一二三は、第3回JFKO全日本と第48回全日本大会で結果を残すことができずに選考からもれた。その無念さは本人しかわからないはずで、弟の雄二でも声をかけられなかったそうだ。 |