日本代表強化合宿で誓った 第6回全世界W制&第4回JFKO全日本の全階級制覇  最強遺伝子の絆

3月10-12日、山梨県・富士緑の休暇村において「第6回全世界W制大会日本代表強化合宿」が行なわれた。
全世界W制日本代表33名と、第4回JFKO全日本大会の強化指定選手53名が加わり、計86名がともに汗を流した。目指すは、「W全階級制覇」。チームJAPANが全力を注いだ。

カラテライフ2017年5-6月号 Text/松井孝夫 Photos/神田勲、長谷川拓司

まるで冷蔵庫の中にいるような極寒の稽古場は、選手の体から放たれる熱気で室温が上がっていった。
「大会まで、あと113日!」

奥村幸一監督の大きな声が響き渡る。集結した日本代表選手33名は、第6回全世界ウェイト制での死闘を覚悟しているのか、基本、移動、補強、組手を全力で取り組んだ。緑健児代表、小林功副代表、三好一男総監督、奥村監督、世界トップクラスのコーチ陣・オブザーバーが先頭に立って選手を鼓舞する。最初で最後の日本代表強化合宿は、最初からトップギアに入ったまま突っ走った。
「もっと声を出して行こう!」

第11回世界チャンピオンの島本雄二が、男子主将としてみんなを引っ張る。ケガで稽古を見守る形となった副主将の入来建武も、「声を出そう」とこれに呼応する。とくに目立つ動きをしているのは、前田優輝だ。いつも全力で稽古と向き合う前田が、動きでリーダーシップを取っているように見える。合宿を行なうと毎回の光景ではあるが、若い選手に刺激を与えるといいう意味でも彼の存在が、日本のレベルをさらに引き上げているように感じる。

初日の稽古は想像以上に厳しい内容だったが、二日目は3回も行なわれ、選手の気合いの声が増えていく。誰も根を上げようとはしなかった。

苦しい時に日本代表を支えたのは、強化指定選手が参加していたからだろう。53名の強化指定選手は、日本代表へ選考されずに悔しい思いをした選手も多くいる。なかでも第11回世界大会5位の島本一二三は、第3回JFKO全日本と第48回全日本大会で結果を残すことができずに選考からもれた。その無念さは本人しかわからないはずで、弟の雄二でも声をかけられなかったそうだ。

 


結団式で緑代表は、「全世界ウエイト制、JFKOともに全階級制覇へ向けて最強のメンバーが揃っていますので、意識を強く持って合宿を乗り越えてください」と挨拶した。
 
奥村幸一監督が、実弟であり中国支部の啓治支部長が描いた書画を持参した。これは、前回の第5回全世界W制へ向けて描かれたもので、現在リハビリに励む弟へのエールとも受け取れた。

日本代表の主将は、島本雄二と将口恵美。副主将は入来建武と加藤小也香が務めた。
 
過酷な稽古が始まり、気合いが入る。

トップクラスの合宿だけあり、基本稽古から気迫が違った。
 
前田優輝が取り入れているフィジカルトレーニングも全員で行なった。

塚本徳臣コーチをはじめ、コーチ陣が各選手にアドバイスを送る。とても貴重な時間となった。
 
補強は立てなくなるのではないかと思われるほどの過酷な内容だった。

それでも気持ちを切り替えて、第4回JFKO全日本で新極真会の看板を守るために立ち上がった雄姿に、感動を覚えた選手もいたことだろう。

奇しくも合宿二日目の3月11日は、一二三の誕生日。その日の夜に行なわれた親睦会に参加することなく、夜10時には床へ入ったという。すべては、三日目の早朝稽古に備えるためだ。日本代表の早朝稽古が免除となった一方で、強化指定選手は予定通りに決行された。日本代表と強化指定選手の立場の違いを、象徴する場面となった。

その意図は、JFKO全日本で最強遺伝子の実力を証明してほしいという首脳陣の無言のメッセージがあったからだろう。主力が出場していないJFKO全日本だからこそ、組織の総力が問われることになる。

一二三は、それを察知したのか、こう宣言した。
「JFKOでいい結果を残して、日本選手団にバトンタッチしたいです」

舞台が違っても、気持ちは同じ。最強の絆が、この合宿で結実した。



合宿二日目の早朝は、各階級に分かれてタイムレース。中量級の前田優輝は。転がりながらゴールするほどの執念を見せた。
 
小林功副代表が、判定基準や反則などの注意点を一つひとつ挙げて丁寧に指導した。

6年前の東日本大震災と同日同時刻に、全員で黙祷した。
 
二日目の夜はアンチドーピング講習会が行なわれ、日本アンチドーピング機構から講師として派遣された関水康成(横浜市薬剤師会・常務理事)氏が参加。内藤隆富支部長、古川章支部長も同席して注憲点を説明した。

今回も森永製菓の協力で、サプリメントが提供された。
 
三日目の早朝稽古は、強化選手のみ参加(日本代表選手は任意)。
奥村監督が、ユースー期生の主将を務めた鳥本一二三に監督賞として「伝統継承」の書を贈った。
全日程を終えて、宿舎前でチームJAPANが記念撮影。本当の闘いは、ここから始まる。